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文化住宅を店舗兼住宅に再生するプロジェクト実行

改修前にテナント募集し、入居者もプランニングに参加



「ネオカスタム賃貸」が行われる文化住宅



横から見た同物件。ここが入口になるようリノベーションする予定



文化住宅1棟を入居者とともにリノベーションするユニークな取り組みを行っているのは、大阪市内に33万坪の土地を所有する千島土地(大阪市住之江区)だ。「ネオカスタム賃貸」というプロジェクトを立ち上げ、現在、入居者を募集している。

 実施場所はOsaka Metro 四つ橋線「北加賀屋」駅。住之江区に位置する北加賀屋は、かつては造船業で栄えたが、工場の移転や高齢化により空き家が増加している。このエリアの3分の2の土地を所有する同社は、「アートで栄える街」にしようと2004年から活性化に力を注いでいる。



同社がこれまでに改修した「千鳥文化」。

築60年の住宅が複合文化施設として生まれ変わった



同プロジェクトが実施される文化住宅は、築53年。木造瓦葺の2階建て。長年、家主に賃貸していたが、2019年に建物ごと返還を受けた。建物の状態は悪くなく活用が見込まれることから、再生するに至ったという。

 2階は単身向け賃貸住宅として、1階は飲食、物販、コワーキング、工房に入居してもらおうと募集している。担当の福元貴美子氏は「約20年、街の再生を手掛ける中で、クリエイティブな活動を行う拠点としての要素は確立しつつある。一方、幅広い層が利用できる飲食や物販が少ないので商いを始めたい人を募り開業してもらいたい」と話す。



借主負担を軽減するため、改修費用の一部は同社が負担



改修のイメージパース



解体が進む住宅内の様子



賃貸物件をリノベーションして完成した後、もしくは完成直前に入居募集を行う流れが一般的だ。

「ネオカスタム賃貸」では、入居者を改修前に募集し、決定する。また、プランニングから参加してもらうことで、入居者に合わせた設計・改修を同社の修繕予算内で実現するというもの。同社がテナントの開業に向けた改修費用の一部を受け持ち、テナントの負担を軽減する。

 工事費は「ネオカスタム賃貸」の対象である1階部分に1600万円、2階部分に700万円の合計2300万円を掛ける想定をしている。「移住や開業にかかるイニシャルコストを抑えることで、北加賀屋でチャレンジするプレイヤーをサポートしたい」(福元氏)。同手法はクリエイターの活動サポートなどを手掛けるPOS建築観察設計研究所(同此花区)と連携して企画している。



1区画の専有面積は暫定で15〜30㎡。希望に合わせた広さを提供する。坪単価は7200円。保証金は賃料の12ヵ月分。分割払いも相談で対応可能。共益費はプランニングにより決定する。

 第一弾入居者として、飲食経営や就労支援を行う(一社)NIMO ALCAMO(ニモアルカモ:同住吉区)が決定。就労支援を兼ねたチャイ工房を運営する。

 現在、プロジェクト進行に向けて、建物内の解体を行っている。「造船業が栄えた時代の面影を残しながら住み良い街を創造し続けられるよう、今後もさまざまな取り組みを行っていきたい」(福元氏)。

 千島土地は賃貸業を主事業としながら、海外不動産への投資事業や航空機リース事業も手掛けている。11年には(一財)おおさか創造千島財団を設立し、北加賀屋をはじめ大阪で行われる芸術・文化活動の支援を行っている。



ライター:加藤有里子
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