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コラム詳細

「コロナ禍における賃貸住宅管理業界実態調査Report」について

感染対策や業務効率化のために同協会会員が取り組んださまざまな事例について紹介します


本コラムでは前回 、2022 年 3 月 30 日掲載分に引き続き、(公財)日本賃貸住宅管理協会(東京都千代田区)レディース委員会の「コロナ禍における賃貸住宅管理業界実態調査Report」について記載する。 今回は最終回として、感染対策や業務効率化のために同協会会員が取り組んださまざまな事例について紹介する。


1、オンライン接客・内覧 オンライン内覧は、スタッフが現地に行きスマートフォンのカメラ通話や LINE などを利用して対応していると答える事 例が多かった。その際、「周りに線路や飲食店があること」「どんな匂いがするか」といった音やにおいなど映像では伝わりにくい情報を伝えているという声もあった。
また、360 度パノラマカメラでの物件撮影を進め、VR 内覧を推し進める動きも見られた。撮影するにあたり撮り方やシステムの研修を行った企業もあった。「毎日撮影をコツコツと積み重ね将来的には入居中でも VR 内覧できる物件を増やしていき、オンライン斡旋に役立てたい」との意見も。 近場のユーザーは従前と変わらず、足を運ぶケースが多いものの、オンライン内覧は学生や遠 方の法人、転勤する社会人などの利用は多く、今後も選択肢の一つとして活用していきたいと回答していた。 一方、バーチャルホームステージングを導入した例もある。名古屋市内の管理会社では「来店せずにお客様を 引き付ける広告」は何かないかと採用したという。
写真・動画の撮影は営業担当者が行うため、カメラマンを講師に招いて講習も行い、スマートフォンで物件の 魅力を伝えられるよう努めた。バーチャルホームステージングは、実際の家具を置くホームステージングより安価に行うことができる上、入居後のイメージがしやすく、お客様の反応 も良いので、今後も続けていきたいと考えているそうだ。                                     


2、店舗をレンタルスペースとして提供 「オンライン会議用スペースの需要を感じ、店内の打ち合せスペースの貸し出しを思いついた」のは愛知県内の管理会社。コワーキングスペース運営のノウハウがあったので、社内の同意が得られてからレンタル開始までスムーズに進んだという。利用予約は申し込みから決済まで自動で完結するシステムを活用した。外から直接入室可能なスペースのため、受付用に iPad を設置して、完全に無人で運営できるようにした。 これまで接する機会が無かった占い 師や結婚相談所など異業種の利用があるため、入居者サービスや賃貸入居者の紹介など、賃貸管理・仲介業とのマッチングを目指し、今後も需要に合わせて増設を検討している。                                       


3、社内環境整備で業務効率化 〇福岡県内の管理会社では原則定時退社が義務付けられ、業務を効率化するため各部 門でRPA※ を導入。書類作成を自動でできるようにした。結果、次のような成果があったという。 いずれの業務も時間短縮でき、定時退社だけでなく効率化につながった。 RPA のシステムは、企画部門の社員が業務手順や内容を細かくヒアリングしながら作成している。今後はさらに RPA 化できる業務を検討し、システム作成の担当者と打ち合わせをしながら進めて行きたいとしている。 修繕見積書 1件 30 分 → 05 分(月に 2,250 分短縮) ・定期清掃書類 1件 05 分 → 01 分(月に 480 分短縮) ・定期建物管理請求書 1件 07 分 → 04 分(月に 360 分短縮) ・机上査定書 1件 30 分 → 10 分(月に 1,400 分短縮) ※ロボティック・プロセス・オートメーションの略称。人間の代わりに人工知能に業務を覚えさせ自動化するツールを指す。



〇東京都内の不動産会社では従業員の在宅勤務が増えたことをきっかけに、オーナーからの事務所への問合せを 減らすため、週に一度、空室状況など管理物件の状況を報告するメールの配信を開始した。 同様に入居者の電話対応を減らすため、入居のしおりや物件の掲示板に掲示していた電話番号を削除。すべて メールフォームを通じてのやり取りに切り替えた。これにより、電話による問合せは 7 割程度減らすことができた。


〇従前から社内書類、人事業務、電子申し込みなど電子化を進めていた神戸市内の管理会社。コロナ禍によって、更に紙を廃止する動きが社内全体に広まり、請求書の電子化や入居者と交わすほぼ全ての契約の電子化実現に向けて取り組んでいる。 今後の課題として、オーナー、入居者への配布書類や掲示物が進んでいないため、更なる推進を図りたいという。


4、採用、インターンシップもオンラインで 〇金沢市の管理会社は採用活動の一環として、 Zoom を使用した就活生向けの懇親会を企画。若者事情に鑑み、名前や顔出しをしないほうが発言しやすいのではないかと考え、画面オフ・匿名・チャットでの質疑応答を行い、その様子を YouTube にも投稿した。その結果、忌憚のない質問を受けることができたという。 また、インターンシップも同様にオンラインで開催。自社の360 度カメラを使った物件紹介のロープレを学生に行ってもらい、フィードバックをするなど実務をイメージしやすいプログラムを考え て実施した。

ライター:加藤有里子