演劇や映画、ドラマなどさまざまな舞台美術の企画・製作を行う竹内良亮さん(34)。
京都市内でオーナーからビルの空きスペースを賃貸し、事務所兼スタジオとして幻想的な空間「トコヨノモリ」を創り上げている。
場所は京都市左京区。築30年以上たつビルの4階部分。オーナーが古物商を営んでおり、倉庫として使用していた。12.3年ほど前の竹内さんが大学生だったとき、学生劇団の舞台で使用する家具を探しに出入りする中で、信頼関係が生まれ、賃貸するに至ったという。
竹内さんは自身が表現したい空間を創ろうと2016年から2年かけて制作。「追いかけられて森の中へ逃げる悪夢を見続けた時期があった。恐いけど近付いてみたい。そんな臨死体験をしているかのような、常世の森を再現した」と話す。制作はすべて1人。木はダムの流木を自ら拾いに行き、葉は海外から取り寄せ見事に森を実現させている。
「トコヨノモリ」をスタジオとして時間貸しを実施。コスプレイベントや映画、朗読会などに活用されている。要望があれば、音響、照明などコンストラクションに差をつけて提供している。8月は予約多数だが、9月から受け付けする予定だ。利用料金は3時間3万5000円(税込み)。利用時間は10時から21時の間としている。
有名女優主演の舞台企画・制作も
ところで、竹内さんの独創的な空間演出を生み出せる原点はどこにあるのか。
京都大学在学中に学生劇団に所属。さらに舞台美術に関する専門教育を受けようとロンドンのミドルセックス大学に留学し、現地の舞台美術家のアシスタントとしても活動してきた。「例えば絵を描かずにいきなりする舞台芸術家など、1パータンではなく、色々なやり方があると感じた。彼らや街に刺激を受け、帰国した」(竹内さん)。帰国後、舞台美術などのイベントを行うユニット「伝舞企画」を発足。吉岡里帆さんなどが出演した京都大学西部講堂での公演「Desperado Party ザ・ラストオーダー」を実行するなどしている。
「トコヨノモリ」のほか、ホテルに泊まりながら演劇を楽しむ「HOTEL SHE,(ホテルシー)京都」や、戸建て住宅を改装した「コト空間ESPスタジオ」など、竹内さんが演出した空間を体験できる物件がいくつかある。 このような独創的で異次元空間にするという、従来と全く異なる発想が、空き建物の活用の一助となるのではないだろうか。
ライター:加藤有里子
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