元英語専門学校だったビル。エントランスは英語学校の趣きを残すため、ライブラリーをイメージしたデザインに仕上げた
すまいの未来研究機構理事・明石土建副社長 谷弘一氏
コワーキングスペース立案に参加した学生
空き家の活用と地域活性化を手掛ける(一社)すまいの未来研究機構(神戸市)は、コワーキングスペース「Suki_ma(すきま)」を4月24日にオープンした。
場所はJR神戸線「神戸駅」、阪神電気鉄道「高速神戸駅」から北に徒歩3分。建物は、地元のデベロッパー、明石土建(兵庫県明石市)が所有する「神戸駅前ATビル」の8階から10階の空きフロアを利用した。(一社)すまいの未来研究機構はコワーキングスペースの企画や運営を行い、明石土建との共同事業で進めている。
「神戸駅前ATビル」は築32年RC造10階建て。関西学院、啓明学院にゆかりある「パルモア学院」が英語専門学校として活用していたが、2020年に閉校。売却されたのに伴い、明石土建が2021年3月に取得した。購入後、エントランスを改修をして、3階まではテナントがすぐに決まったものの、4階より上部の入居付けに苦戦した。同社の副社長兼、すまいの未来研究機構の理事を務める谷弘一氏は「エレベーターが建物の真ん中にあり、廊下がスペースで取られているという、使い勝手の悪い構造により、大掛かりな工事をして広い部屋にして貸すことも難しかった。そのため、間取りは変えずにどのように貸し出そうか考えあぐねていた」と話す。
9階のオープンスペース。プロジェクターやロッカーのほか、キッチンやレンジをも完備している
初期費用・運営費用を抑えて再生
そこで、空き家再生と地域のコミュニティ支援を手掛ける、すまいの未来研究機構で企画することに至ったという。立案には神戸芸術工科大学の学生らも参加。「空き室を再生したら終わり」ではなく人が集まる場所にしようとコワーキングスペースにすることが決定した。学生、社会人、フリーランスなどさまざまな属性の人が、会議や勉強、読書など多用途で使用できる空間のづくりに取り掛かった。「同時にできるだけイニシャルコスト、ランニングコストを掛けず、後々、賃貸として貸し出せるようにした」(谷氏)。また、同事業には事業再構築補助金を活用したという。
すべて個室スペースとした8階部分
オンライン打ち合わせや電話がしやすいドア付きの完全個室
コストの観点から無人対応できるように、スマートロックを採用。利用者がクレジット決済で入室するサービスを導入した。3フロアあるうち、8階部分はすべて個室スペースにした。ドア付きの完全個室が6室。木材でセパレートした半個室を9室設けた。9階はワンフロアをオープンスペースにして提供。プロジェクターやキッチン、冷蔵庫、電子レンジ、ロッカーを完備した。貸切の時間帯を除いて、個室の利用者も使用することができる。10階は、小人数が利用できる貸し会議室2室として、ホワイトボードやモニターを設置した。
今後はセミナーや交流会なども開催していくという。利用料金は現在、オープン価格として提供しており、1時間110円(1時間以降30分ごとに110円)。月額利用の場合、オープン会員が1万6500円。貸会議室は1時間1320円(1時間以降、15分ごとに330円)。利用可能時間は7時から22時まで。谷氏は「神戸の中心地にありながら、大阪、東京など以東、広島、福岡などの以西にも移動しやすいため、活動拠点としてたやすく使用できる。ここが、新たな出会いやアイデア創出の場となるよう提供していきたい」は意気込む。
(一社)すまいの未来研究機構は、インスペクションの啓発や、行政と連携した空き家活用イベント、古民家を宿泊施設などに活用して地域の活性化を図る「まちづくりアカデミー」などさまざまな活動を行っている。これまで、明石市で築70年の古民家を市の外郭団体に借したり、神戸市西区に建つ築60年超の古民家を、カフェに再生したりしている。
ライター:加藤有里子
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