「レンタルスペースを毎週木曜日、大学生に間貸ししている」と話すのは、賃貸業を営むエスケー不動産管理(大阪市北区)角倉一(すみくらまこと)代表。
所有する「レンタルスペースUNO(ウノ)」はOsaka Metro堺筋線・谷町線「南森町駅」、JR東西線「大阪天満宮駅」から徒歩6分に位置している。43㎡の室内はバーのような造りになっており、キッチンカウンター8席、ボックス8席あり、最大24人まで収容できる空間だ。週末や歓送迎会、忘年会シーズンなど繁忙期は需要があるものの、運営に苦しんでいた。「コロナ禍では利用客が多かったが、通常生活に戻り、稼働率が低下した。何とかしたいと思っていた」(角倉代表)。
若者支援でスペース代を廉価に設定
これまで何度か、間借りしたいという相談はあったものの、事業内容や計画性の問題などから契約に至らなかった。そんな折、店を出したい人と貸したい人をつなぐコミュニティサイト「店タク」から問い合わせが入り、面談することになったという。その相手は、同志社大学経済学部に通う矢野智英さん。週に一度、喫茶店として営業できる場所を探していたという。角倉代表は、「学生が事業をすることに少しでも協力できたらと思った。応援の意味を込めてレンタルスペースとして貸し出すよりスペース代を廉価に設定した」と経緯を語る。
豆の産地から焙煎、入れ方までこだわり提供
矢野さんは「ふぃあろ珈琲」の屋号で店に立つが、ただ珈琲を提供しているというわけではない。豆は産地にこだわり、商社から購入。さらにコーヒー焙煎機の時間貸しを行う焙煎所で自らローストもしている。「豆の品質はもちろん、引く粗さ、注ぐ際の温度、器具、人など諸々で味が変わる。同じようにやっても同じ味にならない奥深さがある。それを追求したい」とコーヒーに対する思いを語る。
コーヒーサークルのコミュニティや環境に魅力を感じて入会したことがきっかけで、コーヒーそのものに魅了されていったという矢野さん。活動は大学の枠を超え、大阪大学や立命館大学など他大学の学生とも交流を図り、大学生で営む大阪東淀川区の実店舗「喫茶あおい」でもスタッフとして店に立っている。今年10月には、コーヒーを通じた地域活性化イベント「ジャパンコーヒーフェスティバルin吹田」にも出展した。
そんな矢野さんだが、喫茶店で独立するつもりはなく就職する予定だそう。就活のため、2024年の春で運営を終了させるという。だからといってコーヒー提供に抜かりはなく、
「年齢を重ねてから自店を持ちたい。それまでは組織に属したい」と熱く話す。貸主の角倉代表は「長く借りてほしいが、矢野さんには就活に専念し納得いく活動をしてもらいたい」とエールを送っていた。
触発され、貸主自身も週一で営業予定
「ふぃあろ珈琲」は毎週木曜午前11時から午後5時まで営業。コーヒーは500円から。飲み比べも用意しているほか、ケーキやクッキーなどを手作りで提供している。
一方、矢野さんに触発された角倉代表は、24年1月から週に一度、自身が店に立ち、飲食店として営業する予定だという。
「ふぃあろ珈琲」
https://www.instagram.com/fiarrow.coffee/
「レンタルスペースUNO(ウノ)」WEBサイト
https://upnow.jp/uno1f/uno-1
ライター:加藤有里子
okiruy:https://okiruy.com/