商店街の空き店舗が2020年11月コミュニティースペースとして生まれ変わったプロジェクトがある。「新大宮広間」だ。
場所は京都市北区紫竹(しちく)・紫野(むらさきの)エリアに位置する「新大宮商店街」。京都市内一長い商店街だが、少子高齢化、消費者ニーズの変化により空き店舗が目立つようになってきた。「新大宮広間」となった場所も、ケアプランセンターが2年前に退去してからというもの、内覧や問い合わせもなく空き状態が続いていた。オーナーの荒川朋彦さんは先祖代々から同エリアに多数土地を所有する地主で、時代の移り変わりを目の当たりにしてきた。
「このまま募集し続けても借り手はないだろうし、新築を建て収益化するのもしっくりこなかった。商店街は店主の高齢化が進む一方で、若い層が入店する動きもある。地域に人が集う場所をつくることが地主としての使命だと感じた」とプロジェクトの発端を話す荒川オーナー。
クラウドファンディングの活用も
どのような空間を創る必要があるのか、荒川さんは地元の不動産会社、フラットエージェンシーとともに考案する中、京都市の「誘導まちづくり支援事業」に申請した。採択されてから大学教授や地元のPTA、京都産業大学の学生らとともに、20年3月から1年かけて議論が交わされた。
その結果、コミュニティースペースとして開設するにいたった。さらに昨秋にはクラウドファンディングで同プロジェクトの周知を図るとともに活動資金を募り、プロジェクター代などの機材費に充てたという。
「新大宮広間」建物は昭和初期に建てられ、長年テーラーが入居していた木造2階建て店舗付き住宅。大掛かりな工事はせず、人々が集える場所として活用できるよう、必要最小限の施工を行った。
1階は大型スクリーンやキッチンを設け、だれでも無料で使用できるスペースとした。非営利目的であればワークショップや無料講習会などの利用も可能だ。2階は照明やライトスタンド、三脚など機材を一式そろえ、有料スタジオとして貸し出ししている。さらに映像制作や編集、上映会もできるよう完備した。
プロデュース、ディレクションはフラットエージェンシーが、施設管理など運営は(一社)my turnが行っている。現在、オープンから2カ月。子連れや地域の住民の利用があるという。改修にかかった費用は600万円。機材代は80万円。
2018年、第一弾となるまちづくりも更地を広場として開設
新大宮商店街でのまちづくりの取り組みは、荒川オーナーやフラットエージェンシーにとって初の取り組みという訳ではない。商店街内の更地を地域の憩いの場「新大宮広場」として開放しており、小物販売やマルシェ、料理教室などさまざまなイベントが実施されているのだ。
荒川オーナーは「古くから住む人、これから住む人、町に興味がある人。みんなの居場所にすることが地域創生につながると思う。少子高齢化が進み、コロナ禍で社会変化が起こるいま、さまざまな取り組みにチャレンジしたい」と意気込みを語った。
ライター:加藤有里子